「ビジュアル・リテラシー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。リテラシーは「読み書きの能力」という意味ですので、ビジュアル・リテラシーは画像を使って情報を受け取ったり伝えたりする力ということになります。
近年、ビジュアル・リテラシーに焦点を当てた教育が注目されています。文章の代わりに写真やイラストを提示して、どのような情報が読みとれるかを子どもたちに問うのです。このような教育は、文章の読解能力が十分に備わっていない子どもに対して有効なだけでなく、多様な言語的・文化的背景をもつ子どもが集まるような場面でも役立ちます。
ビジュアル・リテラシーの手法は教育において既に広く取り入れられています。絵を描くことは文字に頼らずに自分の考えを表現する練習になりますし、一部の書籍は文字が一切書かれておらず読者の想像力を育みます。それでは、学校の授業でもビジュアル・リテラシーを利用することはできるのでしょうか。今回は、小学校の算数を例にとって考えてみましょう。
算数は、数学の初歩的段階ということもあって、とても抽象的な内容を扱う教科です。多くの子どもたちにとって抽象的な概念は理解しづらく、従って、いかに算数の概念を具体的な事例と結びつけられるかが重要となります。そこで有効なのが、児童のビジュアル・リテラシーに訴える授業です。算数の授業の導入やまとめで使える画像と発問例をいくつか紹介します。
発問例
解説
子どもたちは、写真を読みとることで、三角形が身近によく使われているということが実感できます。このような活動は、抽象的な概念を理解する助けになるでしょう。また、三角形は「形が変わりにくい強い形」であることが理解できると、算数がものづくりに応用されていることがわかり、学習意欲につながります。三角形を並べたつくりは「トラス構造」と呼ばれ、建築の設計などで実際に使われていることを補足してもよいでしょう。
発問例
解説
刃をスライドして使うということは、四角形のなかでも上下の辺が平行なものが都合がよいとわかるはずです。しかし、それだけの理由なら、長方形や台形の刃でも問題ないことになってしまいます。本当にカッターナイフの刃の形は長方形や台形でもよいのでしょうか。ぜひ、児童に問いかけてみてください。身のまわりの物と関連づけた発問をすることで、児童の思考は自然と促され、平行四辺形、長方形、台形など、さまざまな形の特徴が整理されていきます。
ちなみに、弊社の教材、ブリタニカ・スクールエディションでは、刃の形が平行四辺形となっていることの利点として、角度が90度より小さい角があった方が、切る場所が見やすいという点をあげています。
ブリタニカ・スクールエディションは、今回紹介した写真やイラストを含めて、算数の概念と身のまわりの具体的な事例との関連を説明する画像やコラム記事を複数掲載しています。画像を読む授業で、児童の主体的な思考を促してみてはいかがでしょうか。
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ブリタニカ・スクールエディションは、小学校、中学校など教育機関で利用されているオンラインのデジタル教材です。