デジタル教科書とは?導入するメリット・注意点や運用方法について

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「GIGAスクール構想」により、小中学校をはじめとする教育現場には、生徒向けのタブレット端末の普及が広がりつつあります。そこで注目を浴びているのがデジタル教科書です。それでは、デジタル教科書とはどのようなものなのか、教材の種類が多様化する状況下では、わかりにくいのではないでしょうか。

この記事では、デジタル教科書の種類と機能やメリット、注意点、そして運用方法までを詳しく解説していきます。デジタル教科書はICT教材との相性も良く、組み合わせることで生徒の理解力をより深めることが可能になるので、ぜひ導入をご検討ください。

デジタル教科書とは

デジタル教科書とは、紙の教科書をデジタル化したものです。ノート型パソコンやタブレット端末から通常の教科書と同じ内容の教材を利用でき、学習者用のみならず指導者用のデジタル教科書も販売されています。

文部科学省は、将来的にデジタル教科書を小中学校に導入する方針を固めています。2022年度には、すでにタブレット端末を導入済みの国公立・私立の小学校5年生・6年生、そして特別支援学校の児童を対象にデジタル教科書を無料配布し、実証実験も開始する予定です。

「GIGAスクール構想」により発行率が大幅にアップした

生徒1人につき1台のノート型パソコンまたはタブレットを配布する「GIGAスクール構想」は着々と進み、2021年3月までに約9割の自治体で対応が完了したとされています。GIGAスクール構想は、デジタル教科書を利用するために使うデジタル機器を普及させる構想です。そのため、デジタル教科書普及に向けた土台作りと考えると良いでしょう。

文部科学省は2024年度の本格導入を目指している

文部科学省では、2022年の実証実験を経て、2024年度には小学校でデジタル教科書の本格導入を目指す方針です。今後のICT教育は導入から活用のフェーズへと移行する段階に入りますが、現状ではデジタル教科書の費用を、自治体か利用者のどちらかが負担することになるため、費用面に課題を抱えています。

デジタル教科書の種類と機能

デジタル教科書は指導者用と学習者用に分かれます。それぞれの特徴を解説しましょう。

指導者用デジタル教科書

指導者用デジタル教科書は教員向けに開発されたものです。電子黒板もしくはプロジェクターを使って拡大表示することを前提に作られており、情報を掲示するための教科書として使用されます。

学習者用デジタル教科書

学習者用デジタル教科書は、生徒が使用するために開発されたものです。内容としては従来使用している紙製の教科書と変わりません。ただし、タブレット端末等を使用して閲覧することを前提に作られており、デジタル用に最適化されています。

デジタル教科書導入のメリット

デジタル教科書を導入するメリットは、主に以下の4点です。

<デジタル教科書導入のメリット>
・生徒が主体的・対話的に学べる
・ICT教材と一体的に使用することで、生徒の理解をより深められる
・生徒の学習・進捗状況を把握できる
・授業を記録することで、指導方法の共有・改善につながる

それぞれの項目を詳しく解説していきましょう。

生徒が主体的・対話的に学べる

小学校・中学校の学習指導要領解説総則編では、学ぶことに興味や関心をもつなどの「主体的な学び」と、子ども同士の協働や教職員との対話を通じて自己の考えを深める「対話的な学び」が重要と結論づけられています。これを実現させるうえで、子どもたちが関心をもちやすい、タブレット等を使用したデジタル教科書は最適といえるでしょう。

ICT教材と一体的に使用することで、生徒の理解をより深められる

ICT教材とは、ノート型パソコンやタブレット端末を使用するデジタル教育で活用する教材です。ICT教材では、動画や音を学習に組み込むことができ、生徒の興味や関心、そして学習意欲を高める効果が見込めます。ICT教材とデジタル教科書を一体的に利用することで、生徒の理解度はさらに深まるでしょう。

生徒の学習・進捗状況を把握できる

先生側のメリットとしては、生徒の学習・進捗状況を把握しやすいことがあげられます。テストの得点集計が容易になるだけではなく、生徒の学習時間までわかります。また、生徒ごとにどこまで学習が進んでいるのか進捗状況を把握できるため、今後の教育方針のヒントもつかめるでしょう。

授業を記録することで、指導方法の共有・改善につながる

授業の記録ができることもデジタル教科書のメリットです。生徒ごとの学習状況を加味しながら、過去の授業を振り返ることにより、より良い授業内容へと改善することも容易になります。さらに、モデルとなる授業内容を共有することで、学校全体の教育レベルを底上げすることも可能です。

デジタル教科書導入の注意点

デジタル教科書を導入するにあたり、以下4つの注意点があることをお伝えします。

<デジタル教科書導入の注意点>
・デジタル教科書を活用した授業方法の研究をする必要がある
・セキュリティや故障のリスクを考え、対策する必要がある
・生徒が学習目的以外に使用しないよう管理・制限する必要がある
・目の疲れなど生徒の健康面に留意する必要がある

それぞれを深掘りしていきましょう。

デジタル教科書を活用した授業方法の研究をする必要がある

教員側の注意点として、デジタル教科書を活用した授業方法について知り、研究する必要が少なからずあります。たとえば従来の授業で、書き込み作業のあるプリントを活用し、振り返り学習の資料として活用している場合、これをICT教育にどう流用するかといった点を考慮しなければなりません。

また、デジタル教科書そのものの使い方を理解し、著作権に関する注意点を守ることも大切です。先生が一定のICTステラシー・スキルがなければ、デジタル教科書を使いこなすことはできないでしょう。

セキュリティや故障のリスクを考え、対策する必要がある

セキュリティソフトを使用したウイルス対策や、予備のノート型パソコン・タブレットの用意などを通じて、セキュリティや故障リスクに対応する必要があります。また、オンラインでデータのやり取りを行う都合上、一定の回線速度や安定性があるWi-Fi環境等の整備も必要です。

生徒が学習目的以外に使用しないよう管理・制限する必要がある

生徒がノート型パソコンやタブレットを使ってYouTubeなどの動画を閲覧したり、ネットサーフィンなどで遊んでしまったりする可能性は十分に考えられます。学習以外の目的で使用されないように、管理・制限しなければなりません。

目の疲れなど生徒の健康面に留意する必要がある

動画を見たり、音を聞いたりといった従来の教科書では不可能な学習が可能になる一方で、目の疲れなど生徒の健康面には留意しましょう。カスタマイズ機能のあるデジタル教科書を使って背景を黒字にするなど、極力負担がかかりにくいよう工夫すると有効です。

デジタル教科書の導入・運用方法

デジタル教科書の購入後は、インストールマニュアルに沿って主導でインストールします。導入業者にインストール作業を依頼する場合、別途費用が必要になるため注意しましょう。導入後の運用方法は2通りで、それぞれ以下のようなメリット・デメリットがあります。

項目端末にインストールしてオフラインで使用するサーバにアクセスしてオンラインで使用する
メリット通信環境がなくても利用できるインストール作業に手間がかかりにくい
デメリットインストール作業に手間がかかる通信環境次第で動作が不安定になる

生徒全員が利用しても高速通信が維持できるWi-Fiを整備できるかどうかにより、運用方法を決定しても良いでしょう。サーバにアクセスする場合、アクセス先として選べるのは学校・自治体のサーバか、教科書発行者・委託先会社のサーバのいずれかです。

まとめ

デジタル教科書とは、紙の教科書と同じ内容の学習をノート型パソコンやタブレット端末から行える教材です。生徒が主体的・対話的に学べることや、生徒の学習・進捗状況を把握できることはメリットですが、生徒の健康管理や、教員に一定のICTリテラシーが求められる点には注意しましょう。

ブリタニカでは、250年の歴史がある百科事典をもとに、デジタル百科事典と新しい学習スタイルを、小学校・中学校・高校・大学とすべての世代へご提案しています。各年代に最適なデジタル教材・オンライン教材をご用意しているので、ぜひ導入をご検討ください。