2020年から探究の授業がスタートしました。しかし手探りの状態で授業を進めている教育機関が多く、調べ学習との違いを明確化できていないケースも多々見受けられます。そこでこの記事では、双方の違いを明確化させたうえで、探究学習を成功させるポイントも簡潔に解説します。
探究学習は「総合的な探究の時間」に行われます。まずは「調べ学習」と「探究学習」がどのように違うのか、概要や目的を確認しておきましょう。
調べ学習は従来の「総合的な学習の時間」で行われていました。これは、課題の解決を通じて自己の生き方を学ぶことが目的となっている学習です。課題の解決が自己の生き方につながるという考えに基づいて展開するものが調べ学習にあたります。
探究学習では、自己の在り方と生き方が一体的であると考えるのが特徴と言えます。生徒に課題を与えるのではなく、生徒が抱いている興味と課題発見を同時に結び付けて成長を促すという考え方です。
「探求」との違いを比較されることもありますが、探求が「何かを求めて探す」ことに対し、探究は「何かを探し究める」ことを意味します。探究は探求よりもさらに踏み込んだ内容で、「学問を究める」という意味にも捉えられるでしょう。
調べ学習と探究学習の違いについて、簡単な表にまとめました。
【調べ学習と探究学習の違い一覧表】
テーマ設定(誰) | ゴール(目的) | |
調べ学習 | 先生 | 答えを見つけてまとめる |
探究学習 | 生徒 | 協働を重ねて学びを深める |
具体的な違いとしては、以下の3をあげられます。
<調べ学習と探究学習の違いリスト>
違い1:テーマの設定者
違い2:「協働的な学び」があるか
違い3:ゴール(目的)
調べ学習のテーマは一般的に先生が決めます。それに対して探究学習では、生徒自らが課題を設定します。黙っていても学習のテーマが与えられる調べ学習と、自分自身でテーマを見つける探究学習とでは意義が違い、アクティブラーニングで目指す「主体的な学習」により近づけるのです。
調べ学習では、与えられた課題やテーマに沿って作成したレポートを提出して終了するケースがほとんどです。しかし、探究学習では「調べる」「回答する」といった作業に加えて「協働する」というタスクも加わります。見つけた課題に対してどう答えたのか、なぜその答えにたどり着いたのかを発表し、フィードバックを受けるまでが探究学習における一連の流れです。
調べ学習では、先生がテーマや学習の範囲を決めることがスタートで、それに生徒が回答するとゴールとなります。一方の探究学習は、生徒自身が課題とプロセスを決めることがスタートで、主体性を発揮しながら学ぶこと自体がゴールです。
ここまでの違いをまとめると、調べ学習は探究学習の中にあるプロセスの一部と考えられます。「調べる」「発表する」という調べ学習の要素に加えて、「課題を見つける」「協働する」といった要素を追加したものが探究学習です。探究学習を導入すると、生徒が主体性をもった学習へと導くことができます。
調べ学習や探究学習は「なんとなく」取り組ませても意味がありません。生徒が主体性をもって学ぶ環境を構築するためには、なんのために学習するのか、そしてどんなテーマなら生徒が関心をもてるのかを考える必要があります。調べ学習・探究学習を成功させるために、以下の2点を意識しましょう。
<調べ学習・探究学習を成功させる2つのポイント>
・学習の目的を明確にする
・生徒が興味・関心をもてるテーマを設定
それぞれを簡潔に説明します。
現代は情報にあふれており、生徒はICT教材を使って情報収集をしているうちに、膨大な情報量に飲み込まれ、学習の目的を見失う可能性があります。特にインターネットに関するリテラシーが未成熟な小学生・中学生の場合、嘘の情報をつかみかねません。
基本的には生徒主体の学習へと誘導すべきですが、ときには先生がサポート役に回ることも大切です。学習の目的を明確にして、生徒が目的に向かってまっすぐ進めるように立ち振る舞いましょう。
調べ学習・探究学習で特に難しいのがテーマ・課題の設定です。いきなり「自分の好きなテーマに決めて良いよ」と言っても混乱し、戸惑う生徒が多いでしょう。まずは身近なニュースから話題をピックアップして、生徒が特に興味のあるテーマを切り取り、調べ学習・探究学習の入り口にすることをおすすめします。
探究学習とは、調べ学習をさらに発展させ、生徒の主体的な学びを導き出す学習法です。重要なのは学習の目的を明確にすることと、生徒が興味・関心をもてるテーマを設定することで、導入やサポートにおいては先生がリーダーシップを発揮しなければなりません。
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