彼のメッセージを受け取るため、編集部スタッフが世界的指揮者の小澤征爾(Seiji Ozawa)氏に会ったのは、2017年12月6日のこと。
数多くのメディアで周知のとおり、気さくで親しみやすい人柄そのままに「世界のオザワ」は普段着で私たちの前に現れ、体調もよかったのでしょうか、インタビューの間、終始機嫌よく、予定の60分をあっさり超過する勢いで、私たちに昔の思い出や音楽に対する思いを熱く語ってくださいました。そこには、多くの聴衆を魅了する指揮法の技術的裏づけ、心に深くしみいる音楽的解釈を兼ね備えつつ、なお偉大な作曲家たちに首(こうべ)を垂れ続ける一人のクラシック音楽ファンの姿がありました。
紙幅の都合で紹介しきれなかったことに、彼が師事した名指揮者たちについて語ったエピソードがあります。ざっくり言えば、シャルル・ミュンシュやレナード・バーンスタインは「俺の指揮を見て学べ」タイプ、ヘルベルト・フォン・カラヤンは丁寧に教授してくれる、いわゆる模範的先生タイプのようです。いずれにせよ、人として、音楽家として、小澤氏に与えた影響には絶大なものがあったのでしょう。そしてもう一人、忘れてならない指揮者に、齋藤秀雄がいることもオザワファンならすでにご存じですね。
2018年春の入院の報と年末の復活演奏
インタビューの約3ヵ月後の2018年3月、小澤氏が大動脈弁狭窄症と診断され入院したことが報じられました。彼の回復・復活を多くが願うなか、2018年12月5日、小澤氏は約1年2ヵ月ぶりに本格的オーケストラを指揮し、カミーユ・サン・サーンス作曲の『序奏とロンド・カプリチオーソ』をサントリーホールに鳴り響かせました。会場には天皇・皇后陛下も訪れ、聴衆総立ちの喝采を浴びたとのこと。この報道に接し、2010年に食道癌(→食道腫瘍)の闘病生活から復帰した小澤氏が、約7分間の『弦楽セレナード』(ピョートル・チャイコフスキー作曲)を指揮したときの感動を思い起こした人も多かったことでしょう。
音楽はひとりひとりの胸に……
このうえない美しい音楽と歓びを多くの人々に送り続ける小澤氏ですが、彼は私たちの前できっぱり言い切ります
――僕は、僕のために、僕が楽しいから音楽をやっているんだ――。
そんな彼のストレートかつ素朴ともいえるメッセージは、ブリタニカ国際年鑑 2018年版または、ブリタニカ・オンライン・ジャパンの「音楽はひとりひとりの胸に響くもの」でご覧いただけます。
なお、クラシック音楽全般に関してはブリタニカ・オンライン・ジャパン(Britannica School)の「西洋音楽史(Western music)」、オーケストラや指揮・演奏に関しては同「オーケストラ(orchestra)」「演奏(musical performance)」も参考になさってください。
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