個別最適化学習とは?ICTで実現する「誰一人取り残すことない学び」

  • ブリタニカ・ジャパン

 

文部科学省は、次世代の教育スタイルのひとつとして「個別最適化学習」を掲げました。これが導入されることで、特別支援を必要とする生徒を含めた「誰一人取り残すことない学び」の実現を目指します。本記事では、個別最適化学習のメリット・注意点、そして円滑に導入・進行させるポイントを細かく解説していきます。

個別最適化学習とは

個別最適化学習とは、生徒一人ひとりの理解力や個性に応じて最適化させた学習の提供を目的とした、次世代の教育スタイルです。文部科学省では「誰一人取り残すことない学び」を掲げており、特別支援を必要とする生徒を含めた全生徒の学習レベル向上を目指します。

個別最適化学習の目的・注目されている背景

個別最適化学習が注目されている背景には、2019年度にスタートしたGIGAスクール構想があります。このGIGAスクール構想は、小中学生が一人一台の端末を駆使し、さまざまな学習を行えることを目指す取り組みとされています。学習に端末を使うことにより、個々に合った学習が容易になり、個別最適化学習をしやすい環境が整いました。

個別最適化学習の実現には「ICT」が重要になる

個別最適化学習の実現に向けて鍵を握っているのは「ICT」です。ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、日本語では「情報通信技術」に置き換えられます。ICT環境を整えることにより、個別最適化学習に必要な「ICT教材」「デジタル教科書」などの活用が可能です。

ICT教育にはパソコンやタブレット端末が必須となり、環境整備のためにはコストが必要です。ICT環境整備に必要な「端末」「サーバー」「ソフトウェア」「電子黒板」などを導入する際にかかる費用は、1/2以内までの補助率で補助金を受け取れる可能性があり、教育機関の実質的な負担額を引き下げられます。

個別最適化学習を導入する5つのメリット

個別最適化学習を導入するメリットとして、以下の5つをご紹介します。

<個別最適化学習を導入する5つのメリット>
・生徒の理解状況や能力に合った学びを提供できる
・生徒の学習意欲向上につながる
・授業の効率化につながる
・特別支援を必要とする生徒の、学びの充実化につながる
・先生の負担軽減や、ペーパーレス化につながる

各項目を順番にチェックしていきましょう。

生徒の理解状況や能力に合った学びを提供できる

すべての生徒を取り残さずに教育を底上げすることが個別最適化学習を行う最大の目的です。ICT教材を授業に導入することで、画像・動画・音声を組み合わせた学習が可能になり、生徒の個性や能力に合った方法で学びを提供できます。また、生徒の理解状況に関するデータを取得しやすいこともメリットです。

生徒の学習意欲向上につながる

文字を読み続けたり、話を聞き続けたりといった受動的な教育が合わない生徒もいるでしょう。しかし個別最適化学習により、端末を使った主体的な学習がしやすくなることに加え、協働的な学習も容易になります。生徒の学習スタイルを切り替えることが、学習意欲の向上にも直結するのです。

授業の効率化につながる

文字だけでは伝えにくい情報を画像や動画、グラフ、表などで効率よく伝えられることもメリットです。一人一台の端末が手元にあれば、細かい文字や情報も問題なく確認できます。黒板から席までの距離によって生まれるアドバンテージやハンディキャップも、ICT教材によってフラットにできるでしょう。

特別支援を必要とする生徒の、学びの充実化につながる

ICT教材を用いた個別最適化学習では、画像や動画、音声など視覚・聴覚に訴えられる授業を進められます。ICT教材の主な機能は以下のとおりです。

<ICT教材の主な機能>
・漢字にルビをつける
・白黒を反転させる
・画面を拡大させる
・文章を読み上げる

たとえば視覚に関する障害を持つ生徒の場合、文字を読み上げる機能を活用することにより、文字や文章が含まれる範囲の学習もスムーズになります。

先生の負担軽減や、ペーパーレス化につながる

先生としては、これまでの紙主体のやり取りからデータ主体のやり取りへとシフトできるため、作業量そのものを削減できます。また、ペーパーレス化にもつながるため、地球環境に配慮した学校の運営も可能になります。

個別最適化学習を行う際の4つの注意点

個別最適化学習を行う際は、以下の4点に注意が必要です。

<個別最適化学習を行う際の4つの注意点>
・導入コストがかかる
・ICT機器のセキュリティ、不具合時の対応を考える必要がある
・先生のICT活用能力により、授業の質に差が出る可能性がある
・生徒の健康に留意して授業を進める必要がある

それぞれのポイントをわかりやすく解説します。

導入コストがかかる

個別最適化学習のためにハードウェア・ソフトウェアを導入する際は、相応のコストがかかります。たとえばタブレットやスマホ、校内のインターネット環境への投資が必要で、先述したとおり補助金を活用しても導入コストの半分は学校側が負担しなければなりません。

また、ICT機器が故障した際には修理代がかかり、場合によっては買い直さなければならないこともあるでしょう。自宅学習と組み合わせる場合は、生徒の家庭にもインターネット環境が必要になるため、このコストがかかる点についても保護者の了承を得なければなりません。

ICT機器のセキュリティ、不具合時の対応を考える必要がある

情報流出に備えたセキュリティ対策や、端末やインターネット回線が使えなくなった場合の対策も事前に考える必要があります。インターネット環境があることを前提に組んだ授業を予定していた場合、何らかのアクシデントでインターネットに接続できなくなると、授業時間を無駄にするおそれがあるため要注意です。

先生のICT活用能力により、授業の質に差が出る可能性がある

効率的な個別最適化学習の実現には、先生のICT活用能力が不可欠です。ICT活用が得意な先生と不得意な先生との間では授業の質に差が出やすいため、注意しなければなりません。先生が扱いやすいICT教材を導入することも、個別最適化学習を成功させるポイントになります。

生徒の健康に留意して授業を進める必要がある

個別最適化学習ではタブレットやスマートフォンなどの端末を多用します。結果として視力低下やドライアイ、目の疲れなどの症状を訴える生徒が現れる可能性があるため、健康面には十分な留意が必要です。

個別最適化学習を円滑に進めるための3つのポイント

個別最適化学習をスムーズに進めるためには、以下のポイントを押さえておく必要があります。

<個別最適化学習を円滑に進めるための3つのポイント>
・先生のICT活用能力向上のために、研修を行う
・教育ビッグデータやスタディ・ログをもとに学習を提供する
・少人数によるきめ細かな指導体制を構築する

それぞれのポイントを確認しておきましょう。

先生のICT活用能力向上のために、研修を行う

先述したように、先生のICT活用能力によって授業の質に差が生じる可能性があります。この差を埋めるためには、質の高いICT教材の導入や研修の実施がおすすめです。文部科学省でも教員のICT活用指導力の向上を課題として扱っており、ICT活用教育アドバイザーの派遣事業などでサポートしています。

※参考:文部科学省 『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して』

教育ビッグデータやスタディ・ログをもとに学習を提供する

教育ビッグデータとは、学習履歴や学びに関する行動履歴などをデータとして蓄積・分析し、学習の評価や予測に活かすものです。教育ビッグデータと個々のスタディ・ログを解析することで、生徒の進捗と課題が明確化になるため、各データのチェックは欠かさないようにしましょう。

少人数によるきめ細かな指導体制を構築する

ICT教育は効率的な学習法ですが、機器に頼りきりでは個別最適化学習の成功に結び付けられません。端末の扱い方が苦手な生徒や、機能を使いこなせない生徒もいます。少人数によるきめ細かな指導体制を構築することで、本当の意味でのICT教材×個別最適化学習が可能になるのです。

※参考:文部科学省 「次世代の学校指導体制の在り方について(最終まとめ)」

まとめ

個別最適化学習とは、特別支援を必要とする生徒を含めた「誰一人取り残すことない学び」を実現させるためのものです。GIGAスクール構想によってICT教育環境が整備され、個別最適化学習の導入・実施の必要性が全国で叫ばれています。しかし、実現には多くの課題があり、先生側の教育体制を整えるほか、必要な機材の購入・維持費用も重要なポイントのひとつです。

ブリタニカ・ジャパンでは、個別最適化学習の成果を最大限に発揮させられるICT教材を提供しております。教育目的であれば、著作権を気にすることなく使用できる300万点以上の写真・イラストも収録しており、授業でそのまま活用いただけます。興味をお持ちの方はぜひ検討してみてください。