10月上旬といえば連日のノーベル賞受賞者発表に世界が沸きますが、残念ながら今年の日本人受賞者はなし。いよいよ村上春樹かと毎年のように盛り上がる文学賞も、残念ながらフランス人作家の手に渡りました。
ところで、日本人最初のノーベル文学賞受賞者といえば、1968年の川端康成。今年2022年は、受賞4年後の1972年に世間を大いに賑わせた、川端のガス自殺から50年にあたります。
幼少期に両親、祖母が相次いで亡くなり、目の不自由な祖父の介護や看取りに追われた少年時代。およそ子供らしい感情を押し殺さざるをえない不幸な境遇にありながら、研究や他作家との交流を重ね、自身なりの新境地を開拓し、誰もが認める日本を代表する作家の一人となった川端。日本ペンクラブの会長を長きにわたって務め、文学界においてゆるぎない地位を確立した川端。しかし、彼が描く作品世界は「劇的というより断片的、挿話的」で、「静かな哀歌(エレジー)調、抒情的な調子」であった……。
川端作品にこのような批評を添えたのは、『雪国』『千羽鶴』『伊豆の踊子』など川端作品をはじめ日本人作家の作品を英訳して海外に広く紹介し、川端のノーベル賞獲得にも大きく貢献した(授賞式にも同行した)アメリカ人日本文学研究者、エドワード・G.サイデンステッカー Edward G. Seidensticker(1921~2007)です。
ブリタニカ・オンライン・ジャパンの大項目事典『川端康成』は、そのサイデンステッカーが執筆(佐伯彰一訳)し、川端の代表作について、そして川端作品が包摂する「日本的」なるものについて味わい深い解説を加えています。
なお、今年のノーベル文学賞受賞者、フランスのアニー・エルノーについては、『ブリタニカ国際年鑑』の「フランス文学」(2012年版、2017年版、2019年版)でふれております。
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