日本の食料自給率は低い。このことは多くの人が知っていると思います。実際、小学校の社会科の授業でも、日本の食料自給率の低さについて学びます。
では、2020年の日本の食料自給率は、次のうちのどれでしょう?
A)12 % B)37% C)67%
正解は、A)以外です。正解が2つあるとはどういうことでしょうか? しかも、67%って、思ったより低くない数字ですよね? この食料自給率、実は算出方法によって数値が変わってくるのです。
私たちが「日本の食料自給率」というときは、食料全体についてどの程度国内で生産しているかを示す「総合食料自給率」のことを指します。総合食料自給率には、「カロリーベース総合食料自給率」と「生産額ベース総合食料自給率」の2つの示し方があります。
「カロリーベース総合食料自給率」は、国内で消費される各食品のカロリーの合計と、そのうちの国産品のカロリーの合計を求め、国産品の割合を示します。これが2020年の数値で37%。一方、「生産額ベース総合食料自給率」は、国内で消費された各食品の金額の合計と、そのうちの国産品の生産額を求め、国産品の割合を示します。これが2020年の数値で67%というわけです。
37%と67%では、ずいぶん印象が異なりますね。
食料自給率の算出方法は国によって異なり、生産額ベースで計算している国も多くあります。日本では、カロリーベースで計算した総合食料自給率を農林水産省が「日本の食料自給率」として公表しています。この計算方法では、食品のカロリーの高さが大きく影響します。たとえば、野菜のようにカロリーの低い食品の国内生産量を増やしても、総合食料自給率はあまり上がらないのです。また、肉類、牛乳・乳製品などの畜産物や加工品は、国内で生産されたものでも、輸入している飼料や原料を使っている場合は、その分を差し引いて計算します。このことが、日本の食料自給率をここまで低くしている一因と言えるのです。
「ブリタニカ・スクールエディション」では、こうした事実を紹介した記事や客観的なデータを子供たちが自ら精査し、分析して、オープンエンドのテーマについて自分自身の答えを出していく、協働学習の素材を豊富にそろえています。
日本がこれからも安定して食料を確保していくためにはどうしたらよいのか。食料自給率という視点だけでなく、需要と供給の関係や、外国との関係、輸出入の問題など、さまざまな視座で多角的・多面的に食料安全保障の問題をとらえていきます。
食料自給率は上げなければいけない―こうした「当たり前」と思われていることを一度疑って、子供たちの好奇心・探究心を刺激する授業をしてみませんか。今回ご紹介したテーマは、小学校5年生社会科の「日本の食料生産」の単元に関連して実践するのがおすすめです。
上記のリンク先をご覧になるには、ブリタニカ・スクールエディションへのアクセス権が必要です。
ブリタニカ・スクールエディションは、小学校、中学校など教育機関で利用されているオンラインのデジタル教材です。