2020年度から本格実施がスタートしたICT教育ですが、これを実現するためには多くの機器・環境の導入が必要です。いざ始めると決まったときにすぐに着手できるよう、事前に必要となるものを準備しておきましょう。今回は、文部科学省が設定した目標水準と、ICT教育に必要な機器・環境について解説します。
文部科学省は、教育のICT化に向けた機器・環境整備の目標水準を以下のように設定しています。
<2018年度以降の学校におけるICT環境の整備方針で目標とされている水準>
・学習者用コンピュータ:3クラスに1クラス分程度整備
・指導者用コンピュータ:授業を担任する教師1人1台
・大型掲示装置・実物投影機:100%整備(各普通教室1台、特別教室用として6台)
・超高速インターネット及び無線LAN:100%整備
・総合型校務支援システム:100%整備
・ICT支援員:4校に1人配置
・その他:学習用ツール、予備用学習者用コンピュータ、充電保管庫、学習用サーバー、校務用サーバー、校務用コンピュータやセキュリティに関するソフトウェアも整備
※参考:文部科学省 「学校におけるICT環境整備について」
上記を見ると、ICT化を進めるにはさまざまなハードルがあることがわかります。全国の学校ではこれらの準備を着々と進めていますが、なかには時間がかかっているところも多く、環境整備の重要性がいたるところで叫ばれています。
ICT教育に必要なハードウェアは以下の7つです。
<ICT教育に必要なハードウェア>
・学習者用コンピュータ
・指導者用コンピュータ
・学習用サーバー
・普通教室、特別教室用の周辺機器
・コンピュータ教室用の周辺機器
・校務用コンピュータ
・校務用サーバー
それぞれどのようなものなのか、主な特徴や用途について見ていきましょう。
学習者用コンピュータは生徒が使用するハードウェアのことです。目標は3クラスに1クラス分ですが、理想は「1人1台の普及」といわれています。扱いやすさを重視した場合、ノート型PCやタブレットが最適といえるでしょう。
授業を担当する先生が使用するコンピュータで、こちらは先生1人につき1台が必要とされています。操作性や視認性などを考慮したうえで、使いやすいタイプのハードウェアを選ぶと良いでしょう。
学習用サーバーは学習用ソフトウェアを一元管理するために使用します。設置することにより校内で情報共有しながらICT教育を行えるため、授業の質が大幅に高まることでしょう。なお、各学校で1台分のサーバー設置が必要といわれています。
プロジェクタや実物投影機、電子黒板やデジタルカメラなど、授業で使用する周辺機器も用意しなければなりません。学習のねらいを一度整理し、そこから導入する周辺機器の種類と数を決めましょう。
プリンタ、スキャナ、ヘッドセットなどが挙げられます。プリンタやスキャナに関しては、3クラスに1クラス分程度の準備でも問題ないでしょう。ただし、ヘッドセットは学習者用コンピュータの数に合わせて生徒1人につき1台に普及が望ましいといえます。
先生が使うコンピュータですが、セキュリティ面などの都合上、先述した「指導者用コンピュータ」とは分ける必要があります。校務用コンピュータは主に職員室における校務で使用するコンピュータであり、先生1人につき1台の普及が目標です。
校務に関する情報を活用するためのサーバーで、主に出欠の有無や生徒の成績といったデリケートな情報を扱います。設置することにより外部サーバーを利用する必要がなくなり、情報漏洩などセキュリティ面のリスクを下げられます。
ICT教育に必要なソフトウェアは以下の3点です。
<ICT教育に必要なソフトウェア>
・基本的なソフトウェア
・学習用ソフトウェア
・校務用ソフトウェア
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、それぞれの内容を把握しておきましょう。
基本的なソフトウェアとしては、主に以下の導入が必要です。
<基本的なソフトウェアの内容>
・OS
・言語処理ソフトウェア
・基本的応用ソフトウェア
【例】
・インターネット
・日本語ワードプロセッサ
・表計算
・図形作成
・ウイルス対策
・プレゼンテーション
特に難しく考えず、ICT教育を行ううえでの基盤となるソフトウェアと捉えましょう。これらがなければインターネット接続や教材の作成・計算などができず、ICT教育環境を整えられません。
学習に使用するソフトウェアは、主に以下のように分類できます。
<学習用ソフトウェアの内容>
・デジタル教科書
・資料、データ集
・プログラミング言語
・ドリル学習
・教材作成
いずれも質の高いICT教育を実現させるために必要なソフトウェアです。先生にとって扱いやすく、生徒にとっては見やすくてわかりやすいソフトウェアを導入する必要があります。
校務用ソフトウェアの内容は以下のとおりです。
<校務用ソフトウェアの内容>
・教務(成績管理など)
・保健管理
・学務処理(図書や文書管理など)
主に生徒のデータを管理するために用いるソフトウェアです。優れたソフトウェアを活用することによって、先生同士での情報共有がしやすくなり、作業の効率化にもつながります。
ICT教育の実現には、先述したハードウェア・ソフトウェアのほかに環境整備も必要です。
<ICT教育の必要な2つの環境>
・超高速インターネット、無線LAN
・ICT支援員
どちらも大切な要素となるので、どのような準備が必要なのかチェックしておきましょう。
まずは超高速インターネット環境を整えましょう。また、普通教室・特別教室の両方に無線LANを、特別教室にはさらに有線LANも用意してください。これらを整備しなければ先生・生徒の双方がインターネットを利用できず、ソフトウェアを使った有益なICT教育を行えません。
ICT支援員とは、ICT機器の準備や先生・生徒がICT機器を操作する際のサポート、ソフトウェア・アプリの操作指導、ICT機器・環境のメンテナンスをサポートする専門のスタッフです。文部科学省は「ICT支援員は不可欠な存在」[S12] と位置付けており、2022年度までに4校に1人の配置を目指しています。
※参考:文部科学省 「ICT支援員の育成・確保のための調査研究事業 ~ICT支援員の配置を~」
今回は、ICT機器とはどんなものなのか、機器の活用のためにどのような環境を整備すべきなのかといった点について解説しました。まずは基礎となる環境とハードウェアを整えたうえで、先生・生徒の双方が利用しやすいソフトウェアを導入することが重要です。また、ICT支援員のサポートも欠かせないため、必要な人員は足りているかどうか一度確認してみましょう。
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