ICT(情報通信技術)を活用した教育は、新型コロナウイルスの影響により、さらに注目度を増しています。しかし、ICT教育にはメリットだけでなく、いくつかの課題が残されていることも事実で、導入を躊躇している教育機関は多いかもしれません。
この記事では、ICT教育とはどのようなものなのかについて触れながら、普及させるための取り組み、そしてICT教育のメリット・注意点を解説します。導入に向けて万全の態勢を整えるためにも、ぜひ本記事を参考になさってください。
ICT教育とは、インターネットに代表される情報通信技術を活用した教育手法です。文部科学省は、タブレット端末導入済みの学校を対象として、2022年度中に小学校5年生・6年生を対象にデジタル教科書を無料で配布する方針を固めています。
ICT教材やデジタル教科書を活用するメリットは、生徒の学習意欲や理解度の向上を見込めることです。動画や音を利用した授業も可能になるため、従来の教科書よりもディテールを追求した授業が可能になります。また、生徒の学習状況を把握しやすくなるため、教員の負担軽減にもつながるでしょう。
2021年に文部科学省が発表した「学校教育情報化の現状について」によると、日本のICT活用割合は小学校で24.4%、中学校では17.9%にとどまっています。OECD加盟国平均を見ると、ICT活用割合は51.3%に達しており、我が国のICT教育普及率は海外と比較して、大きく下回っています。
ICT教育においては地域格差も認められます。前述した文部科学省発表の資料では、「公立高校における端末の整備情報」が公表されています。これによると、秋田県などが1人1台の整備目標を100%達成していることに対し、東京都や千葉県、埼玉県といった都市部では50%を下回る状況です。
文部科学省では、小学生~中学生の生徒1人につき1台の端末と、高速ネットワーク環境を普及させる「GIGAスクール構想」を立てています。2022年から実証実験を開始した後、2024年度には学習者用デジタル教科書を本格導入する方針であり、現在は教員側がICT教育を活用するための準備をすべき段階です。
ICT教育のメリットとしてあげられるのは、主に以下の6点です。
<ICT教育のメリット>
・学習の効率化につながる
・わかりやすい授業で、生徒の学習意欲を高められる
・生徒のITリテラシーを育成できる
・個別最適化学習・協働学習が円滑に進む
・先生の負担軽減につながる
・授業データの共有により、指導の質が向上する
それぞれについて詳しくお伝えします。
テキストだけでは伝えにくい情報を、画像や動画・音声を活用して生徒に伝えることにより、学習の効率化につながることがメリットです。ただし、使い方のレクチャーが必要になるため、授業の序盤は学習以外の時間を取られる可能性があります。
前述した画像・動画・音声を活用した調べ学習に加え、イラストを用いた、わかりやすい資料をもとにする協働学習ができ、読み取り学習で閲覧するグラフやデータも見やすくなります。授業内容がわかりやすくなるため、生徒の学習意欲は大幅に向上するでしょう。
情報化社会に対応できる生徒を育成するためにもICT教育が役立ちます。必要な情報や事実を取捨選択する能力や、情報漏えい等の問題を回避する能力が身につき、生徒のITテラシーを育成できることもメリットです。
1人に1台の端末を配布するICT教育では、個別の学習ログを収集できるため、生徒の学習状況を確認したうえで個別最適化学習を進められます。また、論拠となる資料群を使うことで話し合いが活発化しやすく、協働学習も円滑に進むでしょう。
メリットとして先生の負担軽減があげられます。従来の紙とは違い、データを扱うことになるため、収集した情報の活用が容易です。また、鮮度の高い情報を素早く収集することも可能になり、作業時間短縮につなげられるでしょう。
授業で活用した資料やデータを教員間で共有すれば、質の高い授業をそれぞれのクラスで実施しやすくなるでしょう。ICT教育の導入により、教員全体のレベルを底上げし、指導の質を向上させることも可能です。
ICT教育には多くのメリットがある一方で、以下の注意点にも目を向けなければなりません。
<ICT教育の5つの注意点>
・導入コストがかかる
・先生のICT活用能力によって、授業の質に差が出る可能性もある
・生徒の「考える力」や「書く力」が低下する可能性もある
・ICT機器のセキュリティや、故障時の対応を考える必要がある
・生徒の健康問題に留意して授業を進める必要がある
それぞれの項目をわかりやすく解説します。
ICT教育に活用する機器や教材を購入するための導入コストが必要です。個人購入の場合、保護者に負担を求めなければならず、これも大きなハードルになっています。故障に備えた代替品の準備も必要であり、さらに修理費が別途必要になることも見込まなければなりません。
タブレット等のハードウェアに対する知識量や、教材を上手に活用するスキルレベルは、教員のICT活用能力によって異なります。活用能力に長けた先生と、そうでない先生との間に、授業の質に差が出る可能性のあることも懸念材料です。
ICT教育ではインターネットを活用する機会も多く、生徒は考えるよりも前に答えを調べてしまう可能性があります。また、キーボード入力の機会が増加することもICT教育の特徴です。これらの事情により、生徒の「考える力」や「書く力」が低下する可能性を否定できません。
インターネットに接続する以上、外部からの悪質な攻撃や内部からの情報流出に備えなければなりません。また、機器が故障した場合や、Wi-Fiなどの通信環境に不具合が生じた場合に備え、事前に対応を考えることも重要です。
タブレットやパソコンを使った授業では、生徒の視力低下などの健康問題にも留意して授業を進める必要があります。また、有害サイトへのアクセスを遮断したり、学習以外の目的で端末を多用したりできないように設定し、心身の両面をケアすることも大切なポイントです。
ICT教育とは、情報通信技術を活用した教育手法のことを指す言葉です。文部科学省では2024年度からICT教育を本格的に導入する方針を示しています。徐々に設備の整備も進みつつあり、現在は教育機関側・教員側がICT教育導入に向けた準備を整える段階といえるでしょう。
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