自宅学習の後に対面授業を行う「反転授業」が世界的な注目を集めています。反転授業を取り入れることにより、従来の授業スタイル以上に生徒の学習意欲やスキルの向上を導き出すことが可能です。この記事では、反転授業のメリット・デメリットを解説し、導入のために必要な準備も併せてお伝えします。
反転授業とは、主にオンラインを使用した事前学習を行い、その後に対面の授業で抗議や意見交換を行う学習方法です。対面授業の後に宿題で復習を促す学習法が一般的ですが、反転授業はこれを180度転換させた授業形態といえます。
GIGAスクール構想によってインターネット環境の整備と端末の普及が進み、反転授業以外にもさまざまな授業方法が導入されています。生徒から見て受動的な授業を能動的な授業に転換させる「アクティブラーニング」は代表的な例であり、現在は授業スタイルの転換期といえる段階です。
反転授業はオンライン授業のひとつです。そもそもオンライン授業は、以下の4つのカテゴリーに分けられます。
オンデマンド型 | 事前収録した授業を生徒が好きな時間に視聴する |
ライブ配信型(リアルタイム配信型) | 授業の様子を生中継で視聴する |
同時双方向型 | ライブ配信を通じて先生と生徒がやり取りを行う |
ハイブリッド型 | オンライン授業と対面授業を組み合わせる |
反転授業は「ハイブリッド型」に該当します。また、ハイブリッド型は以下の2種類に分類が可能です。
ブレンド型授業 | オンライン・対面を組み合わせてひとつの授業を完成させる |
ハイフレックス型授業 | オンライン・対面の両方で同一の授業を受ける |
反転授業は「ブレンド型授業」にあたります。
反転授業を導入する主なメリットは以下の5点です。
<反転授業を導入する5つのメリット>
・先生が生徒の理解度を把握しやすい
・生徒の学習効率向上につながる
・生徒自身が理解できるまで、繰り返し学習できる
・生徒が将来に役立つスキルを身に付けられる
・生徒の問題解決能力を育成できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
反転授業の主軸が自宅学習にあると考えれば、対面授業は生徒の理解度を把握する機会として捉えられます。自宅学習により授業内容を理解できているのか、理解できていない場合はどこでつまずいているのかを、生徒個々の様子を見ながら確認できることが先生の立場から見たメリットです。
従来の授業形式では、生徒の理解度を把握するための手段が「小テスト」や「定期テスト」などごく一部の機会に限られていました。 しかし、反転授業を行うことで小テストに使う時間を削減でき、授業の内容をさらに濃いものにすることが可能です。
反転授業はアウトプット主体の授業で、従来のインプット主体の授業とは性質が異なります。わからないことがあれば先生と話し合えるほか、生徒同士で協働する機会も増えるでしょう。アクティブラーニングを実現させることにより、生徒の学習意欲向上を見込めます。
さらに、先述したとおり生徒の理解度を把握できるため、先生は生徒のレベルを見極めたうえで、伸ばしたいポイントに特化した授業の実践が可能です。これにより、生徒だけでなく先生の指導効率も向上させられます。
オンデマンド型のオンライン学習を採用することにより、生徒が自宅で繰り返し学習を行えます。従来型の対面授業では、理解できていない箇所があったとしても授業の内容が進むため、生徒は復習を放棄せざるを得ませんでした。この欠点をなくせることも反転授業のメリットです。
就職活動中や就職後には、ディスカッションやプレゼンテーション、ディベートの機会が増え、小中学校・高等学校では習得しにくいスキルが求められます。早期の教育段階で反転授業を採用することにより、参加型・体験型の学習を日常的に経験でき、将来求められるスキルを育むことも可能です。
自分自身で予習を行い、その後に対面授業・協働学習を行う反転授業なら、生徒の問題解決能力も育成できます。自分の考えを議論によって深め、アウトプットし直すという流れを繰り返すことで、生徒の自主性も育まれていくことになるでしょう。
反転授業を導入する際の注意点として、以下の5つを挙げなければなりません。
<反転授業を導入する際の5つの注意点>
・ICT環境を整備する必要がある
・先生の授業準備の負担が増えてしまう
・生徒の学習意欲次第で、成果に差が出てしまう
・保護者のサポートが必要になる
・生徒の健康面に留意する必要がある
それぞれ順番に確認していきましょう。
反転授業を導入するためには、以下のICT環境を整備しなければなりません。
<反転授業に必要なICT環境>
・生徒が利用するタブレットやスマートフォンなどの端末
・教材を配信するためのタブレットやスマートフォンなどの端末
・インターネット回線
家庭環境は生徒によって大きく異なります。タブレットやスマートフォンを必要なタイミングで用意できない場合や、端末を支給・貸与しても家庭からインターネットに接続できない場合もあるため、さまざまな配慮が必要です。
先生のデメリットは授業準備にかける負担が増えることです。特に動画教材の作成には手間と時間がかかり、一定のスキルも求められます。
ただし、これはICT教材の活用によって回避できる問題です。生徒と先生の双方が扱いやすいICT教材を導入することで、授業準備にかかる時間を大幅に短縮させられます。
自宅学習は先生の目が行き届きにくい場所で行われます。学習意欲の高い生徒が成果を出しやすい一方、そうでない生徒は伸びにくいことが反転授業のデメリットです。生徒によっては自宅学習を一切行わない可能性もあるため、生徒に合わせてアプローチの方法を変えるといった工夫が求められます。
ICT環境を整えることに加えて、学習全般においても保護者のサポートが必要です。端末の操作そのものに慣れていない生徒を支えたり、自宅学習の意欲が低下している生徒のモチベーションを高めたりするためには、保護者に理解や協力を求める必要があります。
タブレットを長時間視聴すると目が疲れやすくなり、視力低下やドライアイなどのリスクも高くなります。勉強の効率や成果ばかりを重視するのではなく、生徒の健康面にも留意が必要です。
反転授業はオンライン授業のひとつで、これまで一般的だった「授業から復習」の流れを「予習から授業」へと転換させるものです。生徒・先生双方の効率アップのほか、生徒の理解力や学習意欲、問題解決能力の向上も見込めるため、世界的な注目を集めています。
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