イギリスという国は、正式名称を「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」といい、イングランド、ウェールズ、スコットランドからなるグレートブリテン島とアイルランド島北東部および周辺の島嶼から成り立っています。世界にさきがけて産業革命が起こった工業先進国であり、文化の面でもW.シェークスピアやビートルズ、はたまた「ハリー・ポッター」シリーズのJ.K.ローリングまで、いつの時代も世界という舞台の中心にいる女王陛下の国という印象を、多くの人がもっているのではないでしょうか。
イギリスとEUとの関係って?
国際的な政治・経済の場では、イギリスは1973年、EUの前身である地域経済共同体のヨーロッパ共同体(EC)に加盟しました。そのECが発展解消するかたちで1993年にEUが発足してもイギリスはそこにとどまり続けましたが、国内では常に加盟継続と離脱という意見の激しい対立が続いていたのです。そして次第にEU離脱を訴える声が強まるなか、2016年6月23日にはEU加盟継続の是非を国民に問う国民投票が実施されました。その結果、投票者の51.9%がEUを離脱することを選択し、ブレグジット(Britishとexitからなる造語で通称ブレグジット[Brexit]といわれています)の流れが決定的になったのです。そして離脱に反対していた当時のデービッド・キャメロン首相は退陣し、メイが政権を引き継いだのです。
イギリスという大国が、国境を越えた共同体からの離脱を選択した背景には、ヨーロッパ全体が、ひいては現在の世界全体が内向的になっているという事実があります。EU離脱に票を投じたイギリス国民は、経済的に困窮する東欧地域や中東諸国からの移民流入の激増や、国境を越えた地域全体の利益を優先するEUの権限拡大に不満を募らせていたのです。こうした傾向は世界各地に見られ、それぞれの国でポピュリズムというかたちとなって表面化してきています。
「ポピュリズム」の世界的な台頭が影響を及ぼす
ポピュリズムとは、大衆迎合主義や自国中心主義と言い換えられます。そしてこれは、EUの理念である国際協調主義とは正反対の考え方なのです。もちろん、この傾向はイギリスにかぎったことではありません。アメリカ、ロシア、中国、イタリア……。世界の主要国はどこもいま、ポピュリズムの傾向が強まっているということは、日々のニュースからも伝わってきますね。
イギリスのEU離脱が決まったとはいえ、そのプロセスはきわめて複雑で、時期から方法、権限の範囲まで、あらゆる段階で、EUとイギリスとの綱引きのような交渉が現在も続いています。2019年6月にメイ首相が辞任しても、イギリスのEU離脱問題が新たな期限とされている10月末までに一気に解決する保証はありません。
そんな緊迫する国際情勢の「いま」を、『ブリタニカ国際年鑑 2019』では各地域の専門家がわかりやすく世界情勢として解説し、明日の世界を展望しています。ブレグジット問題の詳細については「ヨーロッパ情勢」の項目をぜひ読んでみてください。
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